星々ワークショップ2022の記録

課題

合作小説(短編連作)を作る。

 

講師

ほしおさなえ

 

内容

参加者5名前後で1グループを作り、共通の設定のもとで合作をおこなう。設定は参加者が提出した企画のなかから選抜、参加者各人が取り組みたい企画を選んでグループを作る。ひとり10,000〜15,000字の短編を1作ずつ執筆し、全体のタイトルや順番を考えて短編連作として完成させる。

 

開催概要

2022年4月〜2022年9月

1ヶ月に1度のワークショップ × 6回

 

スケジュール

 

第0回 書面によるガイダンス

課題:短編連作の基本設定を考える。

「基本設定」とは、連作全体をつなぐ場所または事物や状況を指し、登場人物や物語の展開は含まない。

 

第1回 グループ・設定の決定

4月23日(土)

各人が考えてきた設定を発表し、実際の創作に使用するものを選ぶ。

各人が選んだ企画によってグループ分けを行う。

課題:グループの共通設定を用い、自分の作品の概要を考える。

 

第2回 各話概要(登場人物・あらすじ)の発表と合評

5月21日(土)

グループ内で、各人が考えてきた短編の概要を発表する。登場人物、あらすじなど、互いの設定にコメントし、内容を整える。似た作品があった場合は調整を行い、作品間のリンクについて考える。

課題:概要をもとにプロットを考える。

 

第3回 各話プロットの発表と合評

6月18日(土)

各作品のプロットを発表し、時系列、行動する場所などのすり合わせをおこなう。作品内容についてもコメントし合い、物語の構成を整える。

課題:前半執筆。

 

第4回 作品中間発表・前半の合評および作品間リンクの確認

7月16日(土)

各作品の前半を読み、文章、内容に疑問点がないかチェックする。内容の矛盾や、理解しにくい点を指摘し合うことで、作品の向上を目指す。

課題:後半執筆。

 

第5回 作品一次提出と合評・細部の確認

8月20日(土)

完成した原稿を提出する。連作全体で、時系列、場所などに矛盾がないかチェックする。たがいの作品にコメントし合い、作品の向上を目指す。

課題:各作品の細部のチェック、推敲をおこなう。短編連作としての順番を考え、全体のタイトルを決める。

 

第6回 作品合評と講評

9月17日(土)

ほかのグループの合作を読み、グループ間の意見交換をおこなう。講師が評価を発表する。

 

結果

優秀作

グループC 第二極楽寮アパート取り壊し祭り

 

日々の町 江口穣

未だ見ぬ色を探しに 月草みつめ

みだれ髪を編む 早海なこ

28号室の俺の話 海山みどり

さよなら家族 蓮見

その土くれの下には イケウチアツシ

 

受賞の言葉

江口穣(グループC代表)

 小説を書くことは孤独な作業で、そして孤独のなかで作られるものであるからこそ価値が生まれるのだ、という言葉を聞くことがあります。それは一面の真実であると思う一方、それだけが全てではないのではとも感じていました。

 物語というものはこんなにも素晴らしいのだ、と僕が感じた原体験は小説だけでなく、(かつて今より少人数で作られていた時代の)映像作品にも多くあります。多様な立場のスタッフが、膨大な時間をスタジオワークに費やすなかでひとつの作品を完成させていく。そうして作り上げられた物語のいくつかに、少年時代の僕は心奪われました。いつか自分もそういった強度を持つ作品を共同で創作する挑戦をしたい。ずっとそう願っていました。

 今回の合作作品はミステリーなどでたまに見られるリレー小説ではなく、場所と時間を共有する連作です。設定の意見調整には多くの時間的、心理的負荷がかかります。けれども今回集まったグループメンバーは、その負荷を引き受けた上で、各々が考える「強さを持つ物語」を書くことも諦めまいとするひとたちでした。その皆での挑戦の結果として、星々ワークショップという場で合作作品が優秀作として選ばれたことを、心からうれしく思っています。

 

作品は、ワークショップ優秀作として「星々vol.2」に掲載されています。

参加者と作品

グループA

メンバー 大場さやか、貝塚円花、橘芙歩、古川桃流、みどり、横井けい

作品タイトル アパートメント鉤括弧

レトロなアパートの取り壊しが決まり、住人たちは退去を迫られ、岐路に立つ物語。母と暮らす高校生、ひとり暮らしの女性、バーの店主、妻子と暮らす夫、ピアニスト、場面緘黙の若者が、 物語をまたいで交流します。

グループB

メンバー 藍沢空、雨琴、ちる、猫村桃、四葩ナヲコ、凛々

合作タイトル スターテイル学園〜月に輝く魔法の花~

魔法が実在する世界。持たざるものが持つものをうらやみ、持つものは持たざるものを追い立てる。おとぎ話でなくなった魔法は、現実の厳しさを映す。自分の居場所を求める人々と、奇跡を呼ぶ花をめぐる物語。

グループD

メンバー 羽田繭、星蔦藍、森山ねこたろう、よよ、rei

合作タイトル メッセージボトル〜瓶が紡ぐ五つの物語〜

折りたたまれた写真、結婚指輪、記念メダル、絵本、シーグラスのネックレス。瓶に入れられた誰かの思い出の品は、見知らぬ誰かの手元に届き、新しい物語を紡いでゆく。時と場所を越えて繋がる5つの物語。

過去のワークショップ


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