星々ワークショップ2023の記録

課題

土地を取材して短編小説を書く。

 

講師

ほしおさなえ

 

期間

2023年3月〜2023年9月

1ヶ月に1度のワークショップ × 6回

 

スケジュール

第1回 取材とは

3月25日(土)

取材方法についての解説を聞き、物語の舞台となる土地や取材内容を考える。

〈課題〉土地を取材し、短文(1,000字程度)を書く。

 

オプション 日帰り取材旅行

行き先 埼玉県川越市霞ケ関・角栄商店街 

 

第2回 短文の発表

5月13日(土)

参加者全員が短文を発表。講師と対話形式でそれぞれの物語の芽を探していく。

〈課題〉物語の概要を決める。

 

第3回 概要の発表と講評

6月10日(土)

各人の概要の発表。登場人物の造形と物語の展開の関係、プロットのまとめ方に関する解説を聞き、小説の組み立てを考える。

〈課題〉プロットの作成。

 

第4回 プロットへの講評・合評

7月8日(土)

グループ合評でお互いのプロットに対して意見を述べ合う。合評と講評を参考に、プロットを深める。

〈課題〉作品前半の執筆。

 

第5回 作品前半の講評・合評

8月5日(土)

グループ合評と講評により、自作を見直す。

〈課題〉後半を執筆し、作品を完成させる。次回WSの1週間前に提出し、ほかの作品を読む。

 

第6回 講評および合評、優秀作発表

9月16日(土)

合評と講評を行う。

優秀作を選出する。

 

結果

優秀作

知らない海を見ている 大場さやか

川へ 竹内亮

もじやのもじゃもじゃ へいた

じょうぎ座γ流星群の約束 森⼭ねこたろう

 

参加者賞(ワークショップ参加者による人気投票)

世界は終わりに近づいている 蓮見

 

提出作品一覧

ラクダと一緒にどこまでも 藍沢空

Our HEROES are Here イケウチアツシ 

堂々と声を出すための読書会 ⽷川乃⾐

パッキャマラード 雨琴

下っ引きOL今日もあたふたで候 海山みどり

花に願いを 宝名彩月(WS後に宝名さらなより改名)

らくだ公園①②  ちょっぴい

空に溶けた田舎パン 月草みつめ

まど奥の、張り⼦の中の 早海なこ

とうぼおりゃんせ 星蔦藍

いつか出ていく街の 四葩ナヲコ

メモリーノイズ よよ

 

優秀作4編は星々vol.4に掲載した。糸川、蓮見、星蔦、四葩の作品については、星々短編小説コンテストの受賞者および運営スタッフであるため、優秀作の対象外とした。作品は星々vol.4に掲載した。

参加者投票による参加者賞はすべての作品を対象とした。

優秀作以外の作品は、制作メモと合わせ、「星々ワークショップ2023作品集+創作過程ドキュメント『ある商店街をめぐる物語&また別の土地の物語』」に掲載した。

 

受賞の言葉

「迷ったことすらも」大場さやか

これまで書いてきた小説の多くが、自分の頭の中だけで組み立てたものだった。だから「土地を取材して小説を書く」ことが不安だった。自分の文章力で、実在の場所を描写できるだろうか。何度か取材地に出向いた。スマホの充電を切らして地図が見られなくなり、迷ったりもした。しかしこの「迷った」という出来事すらも小説に織り込むことができると気付いた。思いがけずたどり着いた場所のことや、慣れない土地で不安な気持ちも思い返して書いた。書かれていることに説得力が増したような気がした。描写できるのか不安だからこそ、実在する場所で何かを見て触れて、感じてみるのだ。想像からは出てこない体験が書くものを連れてくる。それを的確に、他者にも伝わる文章にすることは簡単ではない。だがそこは、ほしお先生と運営の皆様、参加者の皆様からの客観的なアドバイスが助けてくれた。自分とは違う視点からの意見が聞ける機会は貴重である。一人では書けなかった小説の完成をお守りにして、またどこかを歩き、そこで出会ったものを書き留めたい。

 

「小さい発見」竹内亮

ワークショップでは、班に分かれて参会者で合評をするのが楽しかった。始まる前はだいたいは同じように読まれるのだろうと予想していたのだけれど、そんなに簡単ではなくて、わたしが男性のつもりで書いた主人公を参加者は女性と思って読んだといった。

わたしはふだん短歌を作っているのだけれど、小説は物語を展開していくのが特に難しかった。ワークショップは、一回目に東武東上線の霞ケ関にみんなで取材に行き、二回目と三回目は取材に基づく短い描写、四回目はプロットというようにシステマティックに進んでいったけれど、わたしは課題のプロットが出せずに脱落しかけていて、四回目にほかの参加者が合評をしている間、ほしおさんの個別指導を受けた。

十五分くらいだったとおもうけれど、ほしおさんはわたしに「短歌と同じような小さい発見をプロットにしていけばいいんですよ」と言ってくれた。そのあと、すこし物語が展開できるようになった。

 

「ワークショップで変わったこと」へいた

 半年間のワークショップを体験して、自分の中で確かに変わったものがあると思います。

 まずは、初めての取材。今まで何か書くのに調べ物をすることはあっても、「取材です」と正面切って取り組んだことはありませんでした。書く対象をよく見て、他の参加者の方々の視点に触れて、書きたいことにまっすぐ向き合えたのは、難しい以上に、本当に楽しい時間でした。

 次に、自分が今まで書ききることができなかった一万字を超える小説が書けたこと。初稿が書き上がったとき、興奮して震えたぐらいです。課題として少しずつ取り組んでこられたお陰だと思います。今までどうせ駄目だと諦めかけていたものが、また書ける、そして頑張ればまだ長いものにもチャレンジできると信じられるようになりました。

 最後に、自分と同じように物語を書いている方々に触れられたこと。社会人になり、小説を読む方すら周りにほとんどいない中で、書くことを続けていいんだと改めて思うことができました。本当にありがとうございます。

 

「ワークショップを辞められない」森山ねこたろう

小説を書くことをステップアップしたいという思いがありました。ほしお先生や他の参加者さんからのアドバイスを聞き逃すまいと、毎回耳を研ぎ澄まして真剣です。

取材旅行では、川越市の霞ケ関へ行き、取材方法方や地元の方の話を聞きました。霞ケ関は私の住まいから遠いので、馴染みのある場所にしようと思い、学生時代に通った田園調布の街を舞台に決めました。散策へ行き、昔あった商店や建物が無くなっていたことに歳月を感じつつ、半日かけて街を歩き回り物語の構想を練りました。

月に一度、いただけるご意見は貴重で、自分でも「何か変」と思っているところを的確に指摘してもらえて痺れました。少しプレッシャーがある状況に燃えます。水面の下では足掻いて、何度か改稿し、物語がくっきりしてくるのを目指して、自分なりに納得のいくかたちに持っていけました。小説を書くことは命(時間とパワー)を費やしているとひしひしと感じます。しかし、創作する愉しさと最初の読者がいてくれるからWSを辞められないのです。

 

過去のワークショップ


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