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【爆弾低気圧】あいまいななかに、たしかなものを残したい

江口穣(編集担当)

 

今回は中間小説アンソロジーという『爆弾低気圧』のコンセプトについてお話しします。

 

そもそも中間小説と一口にいってもかならずしも明確な定義があるわけではありませんが、一般的には純文学と大衆小説のあいだにある作品群と認識されることが多いと思います。

(もっとも、現在では中間小説という概念自体があまり使われなくなっていますが)

そしてさらにいえば、純文学や大衆小説といった区分けそのものにもはるか過去よりさまざまな議論がありました。

 

ではなぜ今号よりそんな中間小説を雑誌のコンセプトとして据えたのか。

それは端的にいえば、ほしおさなえさんより教えを受けた人間たちで雑誌をつくることの意味あいを考え、かつメンバーの特性を見据えたときに、この方向性しかないと結論づけたためです。

 

ほしおさんは純文学や現代詩から作家としてのキャリアをスタートされ、現在では一般小説寄りの作品や児童書などを中心に書かれています。

とはいえそれらの物語の多くはとても叙情的で、純文学との境界にあるような手触りを感じている読者の方も少なくないのではないでしょうか。

 

そしてそんなほしおさんの元に集まったひとたちだからか、爆弾低気圧のメンバーはジャンルはさまざまですが、極端なエンタメ寄りのものを書くのでもなく、純文学志向の方でも話そのものの面白さにこだわっている傾向が強いです。


 

それを踏まえ、かつ中間小説というものを中心に据えた本が商業誌はもちろん、文学フリマなどでもほとんど見られない現状をかんがみ、それをコンセプトとした同人誌として本誌を発刊する意味があると考えました。

 

その初の試みとなる『爆弾低気圧』の第三号、まだ道半ばのところもあると思いますが、いずれこの方向性に共鳴してくださる書き手たちの集う場として成長していければと望んでいます。

 

次回は今号のテーマ「わるい大人たち」に関連する話について、執筆メンバーからの声をお届けする予定です。

ぜひお待ちいただければうれしく思います。

 

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